10代から熱い支持を受け続けるホラー作家、山田悠介の作品を知る

復讐が復讐を呼ぶ

復讐したい、復讐で全てが報われると信じて

過激な作品を発表し続けている山田悠介さん、最新の映画作品が2016年に公開される。その名もかなり直球だが『復讐したい』、というものだ。こちらも原作小説は2011年に刊行されて、5年の歳月を経て映画化されている。

そしてこちらの作品でも、映画と原作小説では展開される物語の内容が微妙に異なっているのは言うまでもない、そう思っている人もいるでしょう。残念ながらその通りとしか言いようが無い。別に悪気があってではないが、原作あっての作品を一部変更ではなく内容をそのまま変革させているのだから、何かあるのかもしれません。その点は憶測となってしまうのであれだが、正直この作品を見た時にはありえるかもしれない、と思った。

どういうことかというと、タイトルを見れば分かると思いますが復讐したいというもの。つまり恨みを持つ誰かに報復をすることだが、その矛先となるのが『犯罪者』だとしたら理解を示せないという人ばかりではないでしょう。この作品を見たとき、もし自分ならと考えたら選択するかもしれないと思わず思ってしまった。

作品概要

この作品では犯罪に巻き込まれた被害者と巻き込んだ加害者という、中々にセンセーショナルなタッチで描かれた世界観となっている。今でも度々話題となるが、犯罪を受けた被害者が加害者に対して制裁を求めても、請求通りの刑に処されることはない。認められるケースも有りますが、大半は情状酌量という名の庇護により刑は減刑されやすい。その後受刑した加害者は意気揚々と刑期を終えればまた変わらない日常を過ごす事になる。

許されていいのか、そう思った人もいるでしょう。だからといって自分たちが犯罪を起こしては本末転倒も良いところだ。そんなジレンマを解消させようと言わんばかりにこの復讐したいでは、加害者側へ被害者の遺族ならびに関係者による復讐を許可する『復讐法』が可決された日本での物語が繰り広げられているのだ。

最愛の人を失った主人公は

この物語で主人公は最愛の人を殺害されてしまい、なんとしても報いさせてやろうとして法律に則って復讐者となる。法律がいかに危険なものなのか、それを理解していた主人公の両親などは反対しますが、それを押しのいて参加する。

もしこんな法律があったらどうなっているか、という点についてはあえて言及はしない。それこそ殺したいほど憎んでいると、恨み言をつぶやいている被害者家族がテレビで報道されるのを見ていつもひしひしと感じていた。そういう意味では今作での着眼点は良い付け所といえる。ifの世界とはいえ、ありえたかもしれない法律の内容には狂気の沙汰としか言いようが無いが、ありえたのなら利用しているかもしれないと思う人は多そうだ。

復讐で何かがなせるわけではない

結末だけ語れば、主人公は見事復讐を成し遂げます。妻の無念を晴らしたと爽快な気持ちでいますが、彼のしたことが超法規的措置により犯罪ではないものの人々の偏見は酷かった。自分のしたことに間違いはないと確固たる自信を持っていましたが、彼を許さない人が出てくることを失念していたのだろう。

唐突に主人公の背後から何かの衝撃が加えられる。それは痛覚となって苦しみ、やがてその体は力をなくしたように倒れてしまった。そこにいたのは主人公が復讐法で殺した犯罪者の家族。認められていれば何をしても良いなんておかしいとして、主人公は加害者家族からの復讐を受けてしまったのだ。

その後殺害された主人公の母は、逮捕されたその家族を復讐法により彼女自身が復讐を決意することとなる。復讐の連鎖は終わること無く、今日もまた1人復讐法によって犯罪者を殺し殺され、成し遂げても復讐が尽きない秩序ない社会へと変貌していく様が垣間見られます。

これまでの作品の中では

山田悠介さんの作品といえば、おもしろいくらいに原作と乖離した映画ばかりが作られていた。しかしこの復讐したいについては一部の設定変更が為されているだけで、大本の内容に著しい変調はきたしていない。内容がかなりシビアなものを弄っていけば、恐らくとんでもない作品になっていただろう、そう思うと今作で脚本を担当した人は原作を綺麗にまとめられたといえるかもしれません。

改変が多い山田悠介さん原作の映画の中では、比較的原作寄りの内容が楽しめるのでその点に注目して見てみると、また違った発見が出来るやもしれない。本来原作ありきの映画とはそういう楽しみがあるものだと考えている。事情はどうあれ、リアル鬼ごっこ(2015年ver.)のように監督がやりたいことをしてみたかったから、原作読まずしてやってみました的な暴挙よりかはマシだ。だからといって、現在の日本映画が叩かれる風潮にある事実が覆されるわけではないのだが、それだけクオリティという面を危惧するファンの声が高いのも1つの理由なのでしょう。

リアル鬼ごっこもそう考えたら、その被害者なのかもしれません。