10代から熱い支持を受け続けるホラー作家、山田悠介の作品を知る

パズルが暗示するもの

パズルが示す真実とは

人が死んでいくのを見せつけられる、という表現はあまり適切ではないかもしれませんが、彼の作品は一貫してそうだ。ホラー作家だからといえばそれまでですが、中には過激な作品を執筆している事がある。『パズル』という、2004年に刊行された作品でこちらもまた後に映画化されている。随分映画になっているなぁと言うくらい感心しますが、それもまた人気があるという彼の作家としての強さを意味しているのかもしれません。

パズルという作品について話すと、実のところこちらも原作と映画でストーリーが微妙に異なっている。その点に注目していくと、この作品がどのような落着をするのかが見えてくる人もいるかもしれません。まず異なる点を述べてから作品について話をしていこう。

原作と映画の相違点

原作について

まず原作についてですが、物語はとある超進学校を舞台にした物語となっている。卒業間近となった主人公は学内でもエリートクラスと呼ばれる所属に加わっており、将来を嘱望されている1人だった。彼は父が政府の高官で母も典型的な教育ママだったこともあったので、勉強は出来るが勉強しかさせてもらえなかった鬱屈した人生を過ごしていた。進学後もそんな自分を気にすることはなかったが、共に入学したクラスメイト26名は気付けば15名にまで減っていき、残り11名はついていけずに退学してしまった。担任から目の敵にされない程度に成績を残していた主人公は彼らをかばおうとしなかったが、彼らに対して憧れを抱くようになる。

もしかしたら自分には他の道があったかもしれない、その可能性を示唆するようになると今の状況がバカバカしく感じられるようになる。だからといってどうする事も出来なかったが、まるで天が彼の声を聞き届けたかのようにある事件が勃発する。ある日学校を占拠した武装集団により、担任が拉致されてしまった。助け出すためには校内に隠された2,000ピースのパズルを完成させろというものだった。制限時間は48時間、もし出来なければ担任を殺すと言い出したため、主人公を始めとしたクラスメイトたちは巻き込まれることとなる。

これが原作小説のあらすじとなっています。

映画について

次に映画の展開についてですが、担任の先生がある日突然マスクをつけた男子生徒4人拉致されてしまい、そこで暴行される映像が校内に流されます。その後犯人たちは理事長室にいる理事長を含めた4人に校内に隠したパズルを完成させろと指示します。完成させるとそのパズルには理事長の顔写真が掲載され、その後何者かに理事長は誘拐されてしまいます。

担任の先生を暴行し、果てに流産までさせた男子生徒4人はその後、この事件の裏で起きていたある事実を突き止めた主人公に全員、復讐という名の制裁を受けて死亡する。そして理事長も、拉致監禁されていた場所で必死に出口を探していると、自分と同じように拉致された覆面を付けられた1人の女子生徒を見つけます。理事長はその少女に欲情して思わず強姦してしまいますが、事が終わった後に覆面を取ると、それが最愛の娘だったことに絶望するのだった。

これも全て主人公が画策したこと、理由は彼が恋心を寄せていた少女を理事長と男子生徒4人が強姦し、その事実を突き止めた担任すら非道を働いたことを知ったからだったのです。好きな人のためならば復讐すら厭わない、そんな狂気すら感じる内容となっている。

総じてみると

このように、原作と映画を見るだけでも大分内容が違ってくる。原作小説の場合、武装集団は担任の怨みを持っていた者達による犯行で、拉致された担任も実は裏でかなりあくどい事をやっていたのが終盤で明らかとなります。

対して映画ではこの担任はむしろ善人として表現されており、主に被害を受けたのは主人公が想いを寄せている少女は原作でヒロインに位置する存在だ。原作と映画、ここまで来ると最早原作を見てから作品、と言うよりは原作と映画、双方を全く別の作品としてみるしかない。そもそも物語の展開が違う点からも、設定だけを持ち込んだオリジナル映画作品となってしまっている。

加えて映画のラストでヒロインの少女が、血塗れた制服を身に着けたまま体育館の中でヘッドバンギングをしながら踊り狂うというエンディングを迎えて物語は終わる。ちなみに主人公は真実を突き止めた警察官と屋上で格闘していた際に、2人とも転落死するという顛末を迎えてしまいます。

山田悠介さんの作品は基本的に救いのないバットエンディングが主となっている。但しこの作品に関しては原作では顛末もあって勧善懲悪の締めくくりを見せているのに対して、映画は誰も救われない終わり方となっている。展開的なことを言えばありなのかもしれないが、おもしろいという評価に繋がるかは正直微妙なところだ。